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ストーリー / 約5分で読める

東大卒の非エンジニア社長が、Claudeと2ヶ月で社内アプリを10本作った話

エクセルから卒業する組織のつくりかた

こんにちは、三木智弘です。
僕は昨年東京大学を卒業し、いまは福岡で地方創生の学校「NEO福岡」を運営しています。

正直に書くと、2ヶ月前まで僕は、エンジニアが使うGitHubも、データベースも、Vercelも、よく分からなかった。コードはほとんど書けない。

そんな僕が、2026年3月から4月までの2ヶ月間で、社内アプリを10本立ち上げた。AIアシスタント「Claude」との対話だけで、だ。

これは、一人の経営者が組織を「エクセルから卒業」させていった62日間の記録です。

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なぜ始めたか:「会計ソフトを可視化したい」という願いだった

きっかけは、まったく華々しくなかった。

NEO福岡では会計にマネーフォワードを入れている。データはある。仕訳も自動連携されている。なのに、肝心の「経営判断に使える形」になっていなかった。

毎月やっていたのは、マネーフォワードからCSVをダウンロードして、エクセルに貼り付ける。関数とピボットでなんとか月次PLの形にする。グラフを作って、経営会議で見せる。

つまり、データはデジタルなのに、加工はアナログだった。

僕がほしかったのは、もっと単純なことだ。リアルタイムに数字が見たい。「もし広告費を月20万増やしたら年間でいくら出ていくのか」をボタン1つでシミュレーションしたい。

最初は外注を考えた。だが、要件定義の段階で諦めた。自分が何をほしいのか、エンジニアに伝わる言葉で説明できなかったからだ。

外注は無理だった。かといって自分で作れるわけもない。半年くらい、その状態で止まっていた。

そんな矢先、ある日、ふと思ったのだ。

このエクセル、まるごと──Claudeに、渡してみたらどうなるんだろう。

半信半疑で、チャットウィンドウにエクセルファイルをそのままドラッグした。シート構成、関数、データの意味を簡単に説明して、こう書いた。

これをWebアプリにしてほしい。社内で使えるダッシュボードにしたい。

数分後、手元には動くプロトタイプがあった。

完璧ではなかった。デザインは素朴だったし、まだ自分のPCでしか動かなかった。だが、確かに動いていた。

その瞬間、頭の中で何かが切り替わった。
その日、僕は決めた。社内のエクセルを、ぜんぶClaudeに食わせて、アプリに変える。


苦戦した話:知らない単語の壁と、心が折れかけた瞬間

プロトタイプはできた。だが、ここからが本当の始まりだった。

動くアプリが手元にある。でも、それは僕のパソコンの中だけで動いている。社内で使うには、誰でもアクセスできる場所に置かなければいけない。

ここで僕は、知らない単語の壁にぶつかった。

Supabase(データを置く場所)、Vercel(アプリを公開する場所)、GitHub(ソースコードの保管庫)。Claudeが当たり前のように使うこれらの単語は、僕にとって全部はじめましてだった。

最初に詰まったのが、環境変数というやつだ。「秘密の合言葉のようなもの」を安全に管理する仕組みらしいが、「環境変数って何?どこに書けばいいの?」「設定したのに動かない、なぜ?」と何度もClaudeに聞いた。

「Supabaseに2つのSQLファイル入れましたが、それで完了ですか?」みたいな素朴な質問を、Claudeに何度ぶつけたか分からない。「データが表示されません」と泣きついては、エラーログの読み方を一から教えてもらう。

普通なら、ここで挫折する。本当に何度も、心が折れかけた。

でも、折れずに済んだ理由が1つある。
Claudeは、自分でバグを見つけて、自分で直してくれる。

エラーが出る。Claudeに「動きません」と画面のスクショを送る。Claudeはコードを読み直し、原因を推測し、修正案を出してくれる。それでもダメなら、ログを取る指示を出してくれる。この往復を、Claudeは何回でもやってくれる。怒らない。呆れない。「さっきも同じこと言いましたよね」と言わない。

これが、非エンジニアが開発できる最大の理由だった。

そして気づいた。アプリには、3つの役割しかない。画面を作る道具、データを置く道具、世の中に公開する道具。この3つさえあれば、社内アプリは動く。コストもほぼかからない。個人〜10人規模なら、月0円で運用できる。

「コードを書ける人がAIで効率化する」のは、想像できる話だ。
でも本当に革命的なのは、コードを書けない人が、AIで開発者になれることだ。

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何が変わったか:会社の状況が、常に一瞬で見える

経費管理アプリが軌道に乗った頃から、加速した。経費管理、OKR、パートナー企業管理、プロジェクトマネジメント、採用面接の選考管理。次々とアプリ化していった。

2ヶ月で立ち上げたのは、業務ダッシュボード5本と、AI統合構想1本。すべて、Claudeとの対話だけで作った。

そして、本当に変わったのは、アプリの数ではない。
会社の状況が、常に一瞬で見えるようになったことだ。

  • 経営会議の数値確認・整理の時間:1日 → ほぼゼロ(約95%削減)
  • メンバーのタスク確認時間:数十分 → 1分で全員分
  • カレンダー調整の時間:約90%削減

経営者の仕事の8割は意思決定だ、とよく言われる。だが意思決定の精度は、データの可視化に強く依存している。エクセルに散らばったデータでは、判断が遅れる。

AIで内製化する本当の目的は、コードを書けるようになることでも、ツールが増えることでもない。
会社が見えるようになることだ。

僕は、エンジニアになりたかったわけではない。経営者として、見えていないものを見たかっただけだ。


社内浸透の話:アプリは作れた。でも、誰も使わなかった

ここまで読むと「順調にいったんだろうな」と思われるかもしれない。違う。

アプリは作れた。でも、メンバーは使わなかった。

新しいアプリを朝会で共有しても、メンバーは何も言わない。「なるほど」「いいですね」とうなずいてくれる。その後、何が起きるか。何も起きない。

ただ、これまで通りエクセルを開いて、Notionを使い続ける。誰も「使いにくいです」とも、「やっぱりエクセルがいいです」とも言わない。ただ、静かにスルーされる。

これが、最初の現実だった。

でも、僕は意外なほど落ち込まなかった。代わりに、こういう疑問が湧いてきた。

なぜ、使わないんだろう?どうやったら、みんなが使うようになるんだろう?

そして気づいた。最初に作ったアプリたちは、僕の頭の中の理想で設計されていた。経営者として「ほしい情報」が並んでいた。メンバーから見ると、それは「入力させられるだけのツール」だった。

メリットは経営者にしかない。負担はメンバーにある。これでは使われない。当たり前だ。

発想を逆転させた。

メンバー一人ひとりの「マイページ」を起点に作る。

マイページに、自分の今日のタスクが見える。自分の進捗が見える。自分の評価が見える。

つまり、メンバーにとってのメリットを、画面の中心に置いた

そうしたら、メンバーが日常的にアプリを開くようになった。そしてその副産物として、経営者である僕がほしかったデータが、自然に集まるようになった。

そしてもう1つ、本当に効いたのは、組織の中の文化だった。

改革の過程で、僕は何度もデータベース設計のミスをした。社員が一生懸命入力してくれたデータが、僕の設計ミスで飛んでしまったことが、何度もあった。

返ってきた反応は、僕の予想を超えるものだった。「あ、消えたんですか?また入れますね」「いいですよ、もう一回やります」と、笑って許してくれた。

僕がAXを止めずに済んだのは、この社員たちのおかげだ。

新しいアプリにはバグがある。データが消えることもある。そのとき「誰がやった」「なんでこんなミスを」という空気だったら、メンバーは新しいアプリに触らなくなる。

アプリは「経営者が作って、メンバーが使うもの」ではない。
組織全員で、一緒に育てていくものだ。

クロージング:AIで会社をつくり変えるとは

2ヶ月で10本のアプリを作った。
でも、本当に変わったのは、アプリの数ではない。

組織の中に、3つの合意がつくれた。

  1. 1エクセルから卒業しよう。 不便な前提を、当たり前にしないこと。
  2. 2ミスを責めず、みんなでAIを育てよう。 組織で道具を育てる文化を持つこと。
  3. 3メンバーが楽になるツールを作ろう。 経営者の都合より、ユーザーの体験を優先すること。

AIで会社をつくり変えるというのは、コードを書くことじゃなかった。
こういう合意を、組織につくることだった。


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